弁護士としての経験

 弁護士としての経験は、守秘義務があるので、具体的には言えないものが多いですが、訴訟になったものだけではなく、その前の戦略の相談、行政指導対策、聴聞、不服申立ても少なくありません。それは役所からの相談、市民からの相談、両方あります。

 会社の内部紛争、保険金支払い拒否、借地・借家、公金の違法支出を理由とする住民訴訟、競艇事業から漁協への協力金支出返還請求住民訴訟、公害、営業不許可、交通違反、下水道負担金、まちづくり・地区計画、まちづくり条例、眺望権・景観権、特商法・消費生活条例による事業者への処分、廃棄物処理業の許可、一般廃棄物処理業の許可と既存業者の争い、里道・水路、保険医の登録・保険医療機関の指定の取消し、障害者自立支援法の下における施設の指定の取消し、薬事法の下の省令によるネット販売禁止、都市再開発法をめぐる紛争、森林法による保安林の指定解除、美容師法にいう「美容」の意義、建築基準法違反・建築士法による処分、弁護士法違反、サービサー法違反、弁護士の懲戒処分、行政財産の使用許可の取消し、パチンコ店・ラブホテルの国家賠償・損失補償、宗教法人に対する固定資産税の課税、タクシー特措法に基づく低額タクシー禁止訴訟、入札の指名停止などを扱いました。同じような紛争を 複数回受任しているものもあります。結構はやっているので、忙しいですね。

 具体的に事件名を挙げているものは、このHPでも紹介しています。

刑事事件は2005年度に東弁の「研修」として、国選2回、当番2回を処理しました。以後、刑事事件は単独では受任しません。刑事罰の根拠となる行政法規の解釈問題に限り、刑事弁護士と共同で受任することがあります。



☆衝突した歩行者が重傷で四ヶ月入院して、退院後死亡した事件。弁明の段階で
  危機一髪で処分軽減、刑も略式で罰金で済んだ例


 1月に人身事故を起こした。歩行者が4ヶ月も入院して、5月頃、退院してすぐに死亡。警察の取り調べが2回あった。そのとき、走行車線から左車線に移ろうとして、後方をみていたので前方をみていなかったと供述していた。そこで、前方不注意による死亡事故として、12月になって免許取消しのための弁明の通知が来た。筆者に相談がきたのは、その直前。それまでは、弁護士に相談に行くなんて頭が回らず、しおらしく、しかし、心配しながら処分を待っていたようだ。

 よく聴くと、前方不注意といっても、左から道路に出てきた歩行者に衝突したというよくあるケースではなかった。この道路は、片側2車線で、右の走行車線から、左の車線に移ろうとして後方をみているときに歩行者に衝突したのであるが、その歩行者は、右の反対車線から、中央分離帯を越えて、入っていたものであった。そこで、前方をみていなかったとは言ったが、その意味は、左車線に車線変更しようと、ミラーをみていたので、右前方まではみていないが、左前方はみている。右の方は、走行車線を走っていたときは、中央分離帯に人がいないことは確認している。したがって、左車線に移ろうとしたときに、歩行者が突然出てきたのではないか、酒に酔っていたというし、という主張させた。そしたら、免許取消しが予定されていたのに、180日間の免許停止になった。講習を受けると、100日の免停に短縮されるという。

 刑事処分は、検察官に呼び出されたが、上記の主張をしてもらったところ、前方不注意という単純なものではなく、もう少し丁寧に書き換えられた。退院後死亡したのであるから、事故との因果関係はないと主張したことも最終的には聞き入れて貰ったようで、略式起訴で、罰金50万円ですんだ。罪名も、自動車運転過失致死ではなく、自動車運転過失傷害になった。

 警察の調査はひどいものである。現場検証、被疑者の調書作成の際に現場の状況をどれだけ把握していたのか。

 医師の診断書を争うべきだが、これは開示されていない。行政不服審査法が改正されて(2016年施行)、公安委員会に審査請求すれば、そのとき文書を閲覧謄写できるが、今はできない。刑事事件でも、検察官が起訴してから、検察官が証拠請求した証拠のみ閲覧できるのが原則である。事前には閲覧できない。

 証拠を隠されて、処分を受けるのは、ひどい制度である。

 ともかく、この事件では、弁明の段階でがんばって、処分を軽減させたが、本来は事故を起こしたときに警察と交渉すべき事案である。

 現場検証に立ち会うのが一番よいだろうが、その後でも、事情をよく聴いて対応すべきであった。そうすれば、最初から過失を軽減させることができた。

被害者の状況については、この運転者は、保険会社を通じて聞いているだけであったが、被害者はくも膜下出血であったこと、死亡した理由は多臓器不全であり、そのときの体重は30キログラム台であったこと、退院後は障害を抱える姉(または妹)の家で生活をしていたことなどのようである。最初から筆者に相談があれば、被害者の病院を訪ねて、見舞金を渡し、怪我の程度、部位、他の病気の存否などを聞き、事故との因果関係を争うことができたのではないか。

この運転者は、保険会社に任せて弁護士に相談していなかったというから、何という脳天気と言っておいた。保険会社は損害賠償だけを処理している。免許取消しと刑事事件は担当してくれない。大きな人身事故だから、これを放置するのは、ガンの疑いと言われたのに、精密検査を受けないでガン宣告を待っているのと同じ。 

 もし、筆者の助言がなければ、免許取消し、刑事事件も禁固刑を求刑されることになったのではないか。運転できないから、会社の仕事で車を使っていれば、良くて配置転換、禁固刑なら解雇されるだろう。

これを争って勝つのは大変だが、とりあえず弁護士も2件やるのだから、最低50万円の着手金を要求するだろう。そして、免許取消しを取り消せば、成功報酬、刑事事件も執行猶予が付けば成功報酬、さらに、罰金で済めば大成功で、全部で50万から100万円の成功報酬を要求されるのではないか。

 しかも、裁判をやってもこの段階では勝つとは限らず、勝つにしても、ブタ箱に行くのではないかと、その間心身とも大変な苦労をする。免許取消しが取り消されるのに1,2年かかっているなら、免許を取り直しした方が良くなるかもしれないから、それも意味がなくなる。

 「弁護士の活動方針」で述べた通り、初期消火が大事な典型例である。


☆火災保険金請求訴訟

09年2月18日 

  山口地裁下関支部 某大保険会社相手の火災保険金請求訴訟。同じ会社が二度放火された、

経営が苦しいので社長が火を付けたとして、保険金支払い拒否。被告弁護士の専門的で強力な主張を全て打破して、ほぼ全面勝訴

 同年7月、広島高裁で、被告の控訴理由を退け、新規の主張は時機に後れた攻撃防御方法として排斥。1回結審、裁判所の和解で示された金額に上積みして、ほぼ勝訴的和解、4年越しの大訴訟も片づき、ほっとした。大保険会社の専門弁護士にも負けないがんばりである。

判決文は、http://www.abe-law.com/090218hanketubun.pdf

  山口地裁下関支部平成21年2月18日判決、判例時報2058号115頁以下

 

☆公立のある施設の売店明渡し訴訟

 ある公立のある施設(匿名にしておく)で行政財産の使用許可を受けて売店を営んで8年目、地方独立行政法人になることでもあり、入札にして、賃料も値上げしたいとして、期限切れだとして、半年前に入札の通告。

使用許可は、形式上は、1年期限となっているが、無条件で継続更新してきた。もともと1年期限は採算にも合わず、両当事者も本当の期限とは思っていなかったから形式的なもので、無効であり、半年前の予告ではたりない、値上げなら応ずるが、出る必要はないと頑張った。地裁では、被告側から、1年前、2年前に説明したという趣旨の証拠が出されたとたん、こちらに反論もさせず、まともな理由も付けず1年は有効だとして明渡判決。高裁でも半年前に出ろと言われたら出れるはずだ、高名な学者がなぜこんな事件をやっていると諭されたので、準備書面、控訴理由書に丁寧に書いている、上記の通告は撤回されたと、裁判長相手に45分(11時半から12時15分まで、昼の時間に割り込んで)論陣を張ったら、被告側に多少反論するように言ってくれた。その次も又被告側の反論は不十分で、45分も論陣を張った。口頭弁論とは当事者間のやり取りかと思ったら、裁判長相手であった。そうしたらやっと、裁判長が、次回は10月5日、1年期限の有効性について判断するから、被告側は8月一杯、当方は9月23日までに反論することと指示された。そこで十分反論したら、被告側は慌てたのか、9月30日に反論してきたので、10月3日に再反論したら、被告側は10月4日11時半過ぎにさらに反論書を出してきた。私はそれを見ないで上京したので、翌5日の裁判で、それは見ていない、時機に後れた攻撃防御方法だと反論した。

裁判所からは、和解の勧告。一審では、敗訴、無条件明渡しで、違法に居座ったということになったが、こちらでは、遡って、2年の定期借家契約を締結して、その期限満了時に出るとまとまった。裁判長から、学者としても鋭いが、弁護士としても交渉力があるとお褒めを頂いた(2011年10月)。